北の大地蝦夷共和国。
中でもここ箱館五稜郭は、浪漫を追い求めた者達が集う場所である。










「やっぱり箱館は格別ですね。」
「でしょ?土方さんをたくさん感じられる場所だし。」
「でも、榎本さんも捨てがたい…」
「そっちに行くんですか!」

等と楽しげに話しながら歩いているのは、の4人。
彼女達は、五稜郭祭を楽しむためここに集まり、
先ほどまで五稜郭を歩いて、その歴史に触れてきたばかりであった。
熱く語りながら、古戦場箱館五稜郭街道を下ってきた時のこと。
の視界に飛びこんできた店があった。











倶楽部五稜郭











こんなところに、こんな店あったっけ?
がふと疑問を抱いた。
その瞬間、他の3人が立ち止まる。
「疲れましたね。」
「そういえば、今日ずっと歩きっぱなしだし…」
「そろそろご飯も食べたいですよね。」
の3人が各々口にする。




「そうだね、そろそろ何処かで休憩……」
そうが言いかけた言葉を、遮る人物がいた。








「それなら、是非此方で休んでいかれてはどうかな?」








驚いて振り返ると、倶楽部五稜郭の扉の前に男性が立っている。
黒のトレンチコート姿に、銀髪と髭を携え、穏やかな笑みを湛えながら。
「えっ!?」
4人が驚くのも無理はない。
そこに立っているのは、紛れもなく旧幕府軍を統率し、
蝦夷へ渡来した総裁、榎本武揚本人だったのだ。





榎本はにっこり微笑むと、スッと右手を上げパチリと指を鳴らした。
すると扉の中から数人の男性が現れ、4人の手を取り店内へと連れて行く。









「淑女のみなさん、倶楽部五稜郭へようこそ!」









そう言って深々と頭を下げる榎本。
その後ろで整列して頭を下げているのは、新選組の隊士達だった。
「ここって…ホストクラブ!?」
「あ…ありえない………」
ゲームで見慣れている面々が、まさかこんな場所に会しているなど、誰が予想できるだろう。



「本来なら指名を頂く所なんだが…君達は初めてだからね。この店のシステムをお話しようか。」
榎本はそう言うと、4人を席へと案内した。





「初回は自由ということで、指名も頂かないし、料金も固定で飲み放題だ。
まぁ、指名できないので、接客はこちらが指定する隊士になってしまうのだがね…」
そう言って榎本は2人の隊士を呼び寄せた。
「こうして出会えたのも何かの縁。ゆっくりしていってくれたまえ。」
席を立つと榎本は、隊士達に何かを耳打ちし、フロアの奥へと行ってしまった。





榎本の背中を何時までも見送っている4人に、改めて2人の隊士が声をかける。



「ごめんね、榎本さんも指名が入ってて忙しいものだから…」



その声で4人は我に返った。
榎本に呼ばれた隊士の1人は…”源さん”こと六番隊組長の井上源三郎である。
「座っていいかな?」
「もっ……勿論です!!」
源さんがの間にゆっくりと腰を降ろす。



「そして、今日の手伝いは彼ね。」
手伝い……つまりはヘルプに着くホスト…ということだ。
「よろしくね。損はさせないからさ、まぁ、楽しんでってよ。」
そう言っての間に座ったのは、八番隊組長の藤堂平助である。




「可愛い!!」と誰もが思ったのだが、彼の反応が目に浮かぶので、
一人として声に出すものはいなかった。












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